建築セッション
BIMソリューションで拓く、建築業界の新しい未来・・・
建築セッションでは、米国オートデスク社エグゼクティブと、日建設計 設計部門副代表 山梨 友彦氏のほか、建築業界のトップ企業のお客様が講演。これからの建築業界を活性化させる新しい手法としてのIPD(インテグレーテッド プロジェクト デリバリー)と、その中核をなすBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)にスポットが当てられた。
C-1
オートデスクによる建設業界向け最新ソリューション
BIMや社会基盤の情報化による課題解決
米国オートデスク社
AECインダストリマーケティング
バイス プレジデント
ジム・リンチ(Jim Lynch)
同時通訳
講演の冒頭では、「世界的な経済不況で、建築業界は苦境に立たされています。しかし、こうしたなかでも、これまでの仕事のやり方や技術の見直しに取り組む企業はしっかりと成功をつかみとります。例えば、現在、コスト削減に加え、エネルギー問題や地球温暖化などに対応するサステナブルデザインへのニーズが高まっていますが、これらをいち早くつかみ、適切なサービスを提供できる態勢を整えられた企業こそが、これから時代の競争を勝ち抜いていくことができるのです」と語りました。
ここで大きなヒントになるのが、IPD(インテグレーテッド プロジェクト デリバリー)という新しい手法。そして、その中核をなすBIM(ビルディング インフォメーション モデリング)です。
まず、IPDとは、設計者、建築業者、エンジニア、工事請負業者、施主などの建設のプロジェクトメンバー全員が、初期段階から協業体制でビジネスが進められるようになる形態のことを指します。これによって、プロジェクトのビジョンや目標が共有され、結果に対するリスク、責任、報酬なども一本化されるため、各メンバーが利害関係などの摩擦にとらわれず、最大限の成果に向けて集中できるという効果が望めるようになります。
そのなかで、とくにBIM の活用は重要なものとなります。すべてのメンバーがわかりやすく可視化された3Dモデルを共有することで、コラボレーションの加速と生産性の向上を図っていくことができます。
例えば、BIMによる設計をベースに、エンジニアは空気の流動解析などが行え、工事請負者はコスト管理などが行えるようになります。そして、その結果はすぐにフィードバックされ、初期段階でよりよい設計を打ちだしていくことが可能となっていくのです。こうしたBIM の有効性を裏付けるものとして、米国連邦政府の建築物を管轄するGSA(米国政府調達庁)が、BIMモデルの基本設計案の提出を義務化しているという実例が示されています。
最後に次のように語り、講演を結びました。
「IPD、そしてBIMは、建築業界の明るい未来を切り拓いてくれることでしょう。そうしたなかでオートデスクは、BIMのプラットフォームを中心に幅広い製品を提供し、建設業界の変革をサポートしていきたいと考えます」。
C-2
〈BIMによる建築設計士の新しい可能性〉
建築家がBIMで目指す環境設計
株式会社 日建設計
設計部門 副代表
山梨 知彦 氏
東京建築士会CPD認定 1単位
日建設計で設計部門の副代表を務める山梨氏は、現場の立場から、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)のメリットについて語りました。
「BIMの導入によって、初期段階で後工程に発生しそうな負荷を軽減するという設計プロセスのフロントローディング化が進みます。そうなると大幅な生産性の向上やコスト削減、納期の短縮などが図れることから、従来の建設業界の枠組みを変えるほどのインパクトがもたらされることになります。なかには建築設計者や意匠デザイナーの仕事が大変になるのでは、との声があるのも事実ですが、基本設計、構造設計および環境シミュレーションが効率的に実施できるようになるということは、設計者のメリット以外、なにものでもないでしょう。」
山梨氏の言葉を要約すると、BIM活用の具体的メリットは、以下のようなものとなります。
まず、なにより、可視化された設計データで、クライアントとイメージを共有できれば、スムーズに商談を進めることが可能となります。さらに、作成した3Dモデルで屋内外の風通し、室内の輝度や照度、季節ごとの室内の温度など、説得力のある数値を裏付けとした環境シミュレーションも実施できるため、モデルの実効性を検証しながら設計にフィードバックできるというメリットももたらされます。これだけではありません。工事概算見積もりの迅速な算出、電子データ化による申請業務の短縮化、設計の精度向上とスピードアップ、竣工検査や中間検査の効率化、および竣工物件の電子データ化による建築物の合理的な管理なども大きなメリットとなります。
最後に山梨氏は、今後、住宅の重要な3要素である衛生、空調、照明をサービスとして提供する新規建築ビジネスが登場するなど、BIMの導入が拡大することにより、建設はハードウェアビジネスからソフトウェアビジネスに近づいていく可能性もあることを示唆し、次にように結びました。
「個人的見解ですが、建設業がモノづくりから、機能や性能を提供するサービスプロバイダーのような存在になる時代が到来するかもしれないと考えています」。
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