土木セッション
2009年3月31日に国土交通省より発表された「CALS/EC アクションプログラム2008」により、「情報化施工」、「建設ICT」、そして「3次元データ」に注目が集まっています。一つ目のセッションで、官の立場から「情報化施工」について、現在、どのような取り組みが行われているのか、施工や設計の具体例を紹介しました。また、二つ目のセッションでは、Autodesk Revit StructureやAutodesk NavisWorks等の最新ソリューションを活用して、実際の3次元配筋モデルを作成する過程をデモンストレーションして、土木業務においても、設計者、発注者、施工者が一体となって3次元設計ツールの今後のニーズについて語りました。
A-3
広がる情報化施工、最新の動向を紹介
社団法人日本建設機械化協会
施工技術総合研究所
研究第3部 主任研究員
工学博士 藤島 崇 氏
全国土木施工管理技士会連合会CPDS認定
社団法人日本建設機械化協会とは、国土交通省や各種建設現場のサポートを通じ、情報化施工に携わっている機関です。今回取り上げた「情報化施工」に関しては、10年ほど前から語られていますが、ここ2年程で、急速に普及してきた用語です。国交省が、2009年3月31日に発表した「建設CALS/EC アクションプログラム2008」で達成すべき目標の一つとして明記されたこともあり、今、最も注目を集めています。「情報化施工」とは、生産性の向上や品質の確保を目的とし、施工や他のプロセスに電子情報を活用するシステムです。
製造分野では、古くから3次元化、情報化が進められてきており、土木分野の電子化技術の対比を行い、このような技術の進化の観点から、情報化施工が製造業においてのNC旋盤の位置にいること、そしてオートメーション化においては精密な測量や土の品質管理等、様々な問題が残っていることが挙げられました。
国土交通省では、情報化施工推進戦略の中で重点目標に「建設ICTの活用による情報化施工の普及」を挙げており、中小規模の施工でも活用できるように基準や制度の見直しを図っています。また、国土交通省中部地方整備局で積極的に行われている情報化施工の事例がいくつか紹介。振動ローラーによる敷き均しの例では、情報化施工を行うことで、均一な施工が可能となり、品質確保にも繋がること、また、ブルドーザの掘削におけるマシンコントロールでは、施工基面の高さをほぼ均一に揃えることができた事例など実際の施工の映像がスクリーンに映し出され、生産性の高さ、実現性の高さが伺えました。
これからの発展については、発注者側の積極的な姿勢が見られる「今」が旬であるとし、受注者側の方々に積極的に参加頂けるよう、提案させると共に、施工技術総合研究所としても土木現場を表現できるツールの向上や普及、人材育成について努めていく、と言う今後の方針について語りました。
A-4
3次元モデル設計は、複雑な形状の取り合いが明確になるなど利点もありますが、どのように検査するのか、作成するのか、利用方法が不明であるという欠点もあります。しかし、その欠点はノウハウが蓄積される事で解決可能だと語られました。そして、3次元CADではなく、3次元モデル設計ツールを導入しなければならないとし、3次元モデル設計のあり方が示されました。
さらに、本プロジェクトが、発注者である「JR東日本コンサルタンツ」、設計者である「八千代エンジニヤリング」、そして施工者である「奥村組」の3社の共同プロジェクトであることを紹介。その上で、発注者・受注者で考える3次元データ活用法として、Autodesk Revit StructureとAutodesk NavisWorksを使用した配筋の設計、干渉、全数チェックのモデルを公開。配筋を3次元化することにより、設計上では事前に配置・干渉をチェックすることで、精度の高い設計が可能になる上、施工上では鉄筋の配置形状が明確化し、無駄なく鉄筋を発注できるのでコストを抑制の実現、そして管理上では検査が簡略化できるという様々な利点が挙げられました。
実際の3次元配筋モデルとして、土木特有の構造物であるボックスカルバートの配筋設計をRevit Structureで行い、NavisWorksでそのデータの干渉チェックをする様子が実演され、今後は設計者・発注者・施工者が一体となって3次元モデル設計、そして施工をするべきだと語りました。