開催レポート

CG・デザインビジュアライゼーションセッション

昨年に続く2回目の出展となったメディア&エンターテインメントのCGセッションは、前回を超える人気の高さで、会場は開始前から大盛況となりました。今回のセッションは、凸版印刷やミズノなど一般にも広く知られる有名企業をはじめ、製造分野大手企業の3D CGユーザが次々登壇。広汎な産業分野で多彩に活用される、デザインビジュアライゼーションの「新たな流れ」を強く印象づけ、満場の観客に大きなインパクトを与えました。

アイコンの説明セッション資料(PDF)セッション動画(Silverlight)

E-1

プロモーションを進化させたオートデスクの3D CGソリューション
− 高品質な精密機器の新たなマーケティング手法とその成果

日本電子株式会社
医用機器ソリューション営業本部
部長 川中 士郎 氏

トップバッターとして登場したのは、日本電子(JEOL)の川中士郎氏と佐藤美和子氏でした。JEOLは電子顕微鏡や生化学自動分析装置の分野で世界に知られる精密機器メーカー。製品プロモーションもワールドワイドに展開しています。しかし、その製品と製品開発の性質から、どうしてもクリアできない広報戦略上の課題があり、長年にわたって川中氏ら営業担当を悩ませていたそうです。ところがその積年の課題が、3D CGの活用によって一気にクリアされた - そう川中氏は語り始めました。
「3D CADは設計には便利だろうけど、営業には……と最初は興味なかったんです。しかし、その3D CADデータを2次活用し、3D CGで製品完成前に外観図が作れる、ムービーも作れると聞いて飛びついたんです」。そんな営業部隊の要望を受け、実際に3D CG制作を行ったのが佐藤氏です。「私はInventorのインストラクターが本業で、3ds MaxもShowcaseも、本格的に使ったのは実はそれが始めてでした」と意外なエピソードも披露。そんな両氏による「初めての3D CG内製ストーリィ」には、製造メーカーによる3DCGの活用のヒントにあふれ、終演後は観客から盛んな拍手が贈られました。

E-2

凸版印刷、住空間ビジュアル研究室が提案するCG 制作ワークフロー

凸版印刷株式会社
トッパンアイデアセンター 住空間ビジュアル研究室
室長 鈴木 高志 氏

日本を代表する総合印刷会社、凸版印刷の鈴木高志氏によるセッションです。同社は印刷事業のみならず、3次元CGやバーチャルリアリティ技術を駆使した多角的展開で日本のビジュアライゼーションをリードする存在でもあります。鈴木氏はまずその取組みを、VRによるデジタルアーカイブの展開を中心に紹介。ずば抜けたクオリティとスケールで聴衆を圧倒します。次いで住宅設備業界のプロモーションのために創設した「住空間ビジュアル研究室」の、ユニークな3D CG制作ワークフローを紹介しました。これは住設商品のカタログ用画像制作のため、3D CGで作った住空間や点景、内・外装材、背景を蓄積。製品写真に合わせて組み合せ、合成し、最適なカタログ用画像を素早くローコストで生成します。
「製品コンセプトに合せ、いかようにも組み合わせてお客様に提案できます。重要なのはいかに時代を捉えるか。コンセプトの体系化です」。その言葉通り、鈴木氏はクリエイティブ手法に留まらず、時代背景とトレンド潮流を読んだ緻密なコンセプトワークを披露。CGセッションとしては異色とも言えるよりマーケティング指向のワークフローで、観客に大きなインパクトを与えました。

E-3

3D CG を活用して人体皮膚シミュレーション モデルが繰り広げるパフォーマンスウェアの開発

ミズノ株式会社
商品開発本部 研究開発部 研究開発課
渡辺 良信 氏

世界的スポーツ用品ブランド、ミズノの渡辺良信氏が、3D-CG皮膚シミュレーションモデル「マルチボディ」について発表しました。北京オリンピックで話題となった水着のように、近年のスポーツウェアは機能性と共に効果が重視されています。ミズノは、特に動作中の動きやすさに特化した機能ウェアの開発を行っている - そう、渡辺氏は語りはじめました。
「この“動きやすさ”は皮膚の伸びと関連しますが、従来この皮膚伸びに関する解剖学的知見は静的分析だけでした。そこで私たちは3D CGを使い皮膚の歪みを動的に捉え、そのシミュレーション技術を飛躍的に進化させました」。渡辺氏らは皮膚の歪みをはじめ、人体の解剖学的構造を忠実にシミュレーションできる3D人体モデルを作りあげ、これにスポーツの動作を行わせて動きやすさをシミュレートしたのです。複雑な皮膚の動きを同僚や自身の身体で計測・分析し、頂点数57,416、ポリゴン数6万3,376のマルチボディを創り上げた渡辺氏の発表は、3D CGのモノづくりへの活用という点からも非常にユニーク、かつ豊かな可能性を感じさせ、終演後は同氏に名刺交換を求める長蛇の列ができました。

E-4

CGトラック特別セッション
デザインビズ パネルディスカッション
- 製造メーカー内部で制作される広報宣伝用ビジュアル

パネリスト
パナソニック電工株式会社
電器モノづくり・調達革新センター 開発プロセス革新グループ
中村 正治 氏

株式会社ケンウッドデザイン
クリエイティブスタジオ デザイナー
中村 春久 氏

モデレータ
株式会社パーチ
代表 長尾 健作 氏

CGトラックのエンディングを飾ったのは、特別セッションとなるパネルディスカッションです。パネリストは、パナソニック電工の中村正治氏とケンウッドデザインの中村春久氏、さらにビジュアライゼーションのサポートのプロ・長尾健作氏がモデレータを務めます。両中村氏は社内で3D CGを駆使して広報宣伝の映像を作っており、長尾氏の「内部の声を聞く滅多にないチャンス」との言葉通り、3D CG内製化の課題やメリットについて「現場の声」が飛び交う熱いセッションとなりました。
「私自身、元技術者なんです」と語ったのはパナソニック電工の中村氏。「だから技術や製品の理解も早く、その良さを分かりやすく見せる映像が素早く作れます」。一方、ケンウッドデザインの中村氏は設計部門が身近なことのメリットを強調します。「社内だからCADデータが入手しやすく、形や素材、色が変更されてもすぐ情報が得られ、素早く対応できるんです」。他にも多くのメリットや課題が指摘され、長尾氏が「メーカーは3D CG導入検討の資料に、CG制作会社はパートナーと協調していくヒントにしてほしい」と会場に呼びかけるほどの充実ぶり。まさにラストに相応しい60分間でした。
※本セッションでご講演いただいたスピーカの方のホームページはこちら!
 株式会社ケンウッドデザイン(http://www.kenwooddesign.com/
 株式会社パーチ(http://www.perch-up.jp/

ページトップへ▲