Autodesk 3ds Max
「Autodesk 3ds Max クラス」編
Autodesk 3ds Max は、ゲーム、テレビ、映画、そして建築業界、製造業界など、幅広い分野で使われる高機能 3D CG です。そこにはさまざまな分野で磨かれたテクニックとノウハウが集積され、それらを自在に駆使する「達人たち」も結集しています。3ds Max クラスではそんな間口の広さを活かして多彩な分野からスピーカーを招き、変化に富んだ 6 つのクラスを用意しました。 まずはオートデスクで長年 3ds Max を手がけてきたエキスパート、宋明信が「フォトリアルなレンダリングイメージ」作りと「初めての CG アニメーション」という初心者向けアニメ制作講座を実演。次に建築業界で活躍する気鋭の CG デザイナー・林田豪元氏が、CG 制作の生産性を向上する「リニアワークフロー概論」を解説。さらに建築業界注目の BIM に関し「Autodesk 3ds Max と BIM ソフトの共存と連携」を論じました。続いて異色の IT コンサルタント・長尾健作氏は、3D CG 作りに活かせる「カメラの構造と特徴を学ぶ」実践講座に、クリエイターにとって重要な「プレゼン能力向上!」のコツを講義。どれも新鮮な発見に充ちたユニークなクラスとなりました。ここでは特に 3 つのクラスについてレポートします。
オートデスク株式会社
メディア&エンターテインメント
アプリケーションエンジニア
宋 明信
【G-1】フォトリアルなレンダリングイメージを実現するために
「3ds Max クラス」のトップバッター・宋明信は、一貫して 3D CG の技術支援を行ってきたオートデスク屈指の「3ds Max 遣い」。各界の3ds Max ユーザとの交流も広く、豊富な経験と技術に基づいた講義には定評があります。そんな宋が取り上げたテーマは、フォトリアルなレンダリングイメージ作り。15 年余り CG 関係を担当し、多くの CG クリエイターと接してきた宋が最も訊かれることが多いのがこの問題なのです。今回は mental ray やスキャンラインにこだわらず、高品質なレンダリング画像を作るポイントを分かりやすく紹介していきました。
「フォトリアルにするにはどうしたらいいのか? 答えは簡単です。情報を多く入れれば入れるほどリアルになります。でもそれは単にデータ量を増やすということではありません。“イメージとして正しい”情報量を上げていくことが重要なのです」。そう語り始めた宋は、球体と平面を組み合わせた画像を例に、まず CG が“人間の眼に立体に見える”ための 3 要素——鏡面反射光、拡散反射光、周囲光について解説。その正しい情報の作り方を具体的に紹介し、それぞれのライティング設定のポイントについて、実際に 3ds Max を実演していきました。
「特に鏡面反射光は軽視されがちですが、実は最終的なレンダリングイメージの質に決定的な影響を与えます」。この鏡面反射光に関連して、さらにマテリアルの問題に注目。“複数のマテリアル合成”の重要性を指摘し、物体の透明度の変化が素材のもつ光の屈折率に連動すること、金属の質感設定のポイントなどを図示しながら解説しました。また周囲光についてはラジオシティと共に特にフォトンマップの活用を詳説し、パラメータ設定の目安なども具体的に紹介。さらにはレタッチや合成処理まで、3DCGに留まらないフォトリアルイメージ作成について幅広く、深く、しかも徹底して分かりやすく伝え、講義終了時には大きな拍手が起りました。
field jam(フィールドジャム)
林田 豪元 氏
【G-4】3ds Max と BIM ソフトの共存と連携
BIM は建築業界で最も hot な話題の 1 つです。「Autodesk Revit」と共に業界内では急速に普及が進んでおり、DesignViz 分野でも BIM との連携の問題が注目され始めています。この旬な話題を取り上げたのが林田豪元氏のクラスです。林田氏は設計事務所出身の CG クリエイター。古くから 3ds Max のヘビーユーザとして知られ、アトリエ系設計事務所からスーパーゼネコンまで幅広い顧客の建築プロジェクトに参加し、多様な建築ビジュアライゼーションを制作しています。その幅広い経験を活かし、このテーマに DesignViz の立場から切り込みました。「私は設計事務所時代に 3 次元 CAD を使っており、現在も 3 次元 CAD でモデリングして 3ds Max でレンダリングする形で併用しています。DesignViz 業界では BIM ソフトユーザはまだ少数派ですが、いずれ BIM ソフトで作った 3D モデルを設計者から渡される時代が来ます。そのためにも、BIM ソフトと 3ds Max の併用に関して研究しておくことが縦横になるのです」。そう言って、林田氏はまず BIM ソフトと 3ds Max 併用のポイントとして、両者の特徴を最大限生かすことを挙げました。建築モデリングが圧倒的に速い BIM ソフトにモデリングを任せ、多様な演出や仕上などを含めレンダリング工程を 3ds Max で行う、という形で作業を完全に切分けるのが理想的だと言うのです。
これによりワークフローは一段と柔軟性を増し、繁忙期の外注もしやすくなるのです。さらに、このワークフローを実現する上でカギとなる 3ds Max と BIM ソフトの連携について、さまざまな業務シーンを想定しながら課題と解決策を示していきました。変換フォーマットの対応状況や変更発生時のアップデート法、大容量データの扱いやプロキシオブジェクトに関わる問題についても、実際に 3ds Max 等の機能を使って実践的な解決法を紹介。まさに「現場」生まれのノウハウを惜しみなく披露し、受講者の大きな喝采を集めました。
株式会社パーチ
代表
長尾 健作 氏
【G-6】プレゼン能力向上!-相手を説得するプレゼン技術
コンペティションはもちろん、顧客開拓のための売り込みや社内プレゼンなど、プレゼンテーションは、クリエイターにとって時にその人生さえも左右する重要な技術です。このプレゼン能力を向上させるためのノウハウ本や講座はたくさんあります、ですが、そのどれとも異なるより根本的かつ合理的な「相手を説得するプレゼン技術」を語ってくれたのが、パーチ代表の長尾健作氏です。「私は年間 50 回以上こうした講演会やセミナーを行い、その都度やり方を変えて研究し続けています。そこから特に効果的なモノを今日はお伝えします」。
その言葉通り、さまざまな企業を顧客に DesignViz 事業のコンサルティングサービスを提供している長尾氏は、各社へのプレゼンはもちろん、コンサルティングに関連する教育やセミナーなど豊富な経験とノウハウを蓄積しています。メリハリの効いた鮮やかな語り口と印象的なボディランゲージに、満座の受講者もたちまち惹きつけられます——が、そうした表現テクニックなどまったく重要ではない、と長尾氏は断言します。
「プレゼンにおいて最も重要な成功の秘訣は、相手が求めるものを把握してそれを提供できるか。つまり、相手の利益になることを提案する、それが相手に受け入れられる唯一のポイントです。ではどうすればよいのか。重要なのは相手が望む利益を事前に想定することです」。当たり前のようで難しいその実現方法について、まず自分が見せる物に合った相手を選び、相手が求めるものを想定し、その適切な見せ方を検討し——と、長尾氏は独自の「成功のピラミッド」を使ってこれを明快に解説。さらにクリエイターのプレゼンのメインツールとなるポートフォリオの整え方やデザイン、そしてプレゼン現場での表現テクニックや心構え、学習法まで、実戦的な技術を伝授していきました。1 時間のセミナーが終わる頃、長尾氏の語りにすっかり魅了された受講者たちが、あらためてそのプレゼン理論の確かさを実感したのはいうまでもないでしょう。